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仏教,歴史,哲学,法律についての備忘録。

保釈に対する抗告と準抗告の違い

起訴後、第一回公判まで*1にされた保釈請求に対する不服申立て準抗告になる。

第一回公判後にされた保釈請求に対する不服申立ては抗告になる。

 

まず、保釈請求に関する決定(許可決定又は請求却下決定など)については、刑事訴訟法420条2項に基づき、抗告をすることができる。

第四百二十条 裁判所の管轄又は訴訟手続に関し判決前にした決定に対しては、この法律に特に即時抗告をすることができる旨の規定がある場合を除いては、抗告をすることはできない。
○2 前項の規定は、勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する決定及び鑑定のためにする留置に関する決定については、これを適用しない。
○3 省略

第一回公判後の保釈請求に関する決定をするのは「裁判所」なので、抗告になる。

 

第一回公判前の保釈請求については「裁判所」ではなく「裁判官」が裁判を行う。「勾留に関する処分」には、保釈請求に対する決定も含まれる。

第二百八十条 公訴の提起があつた後第一回の公判期日までは、勾留に関する処分は、裁判官がこれを行う。
○2 省略
○3 前二項の裁判官は、その処分に関し、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。

「裁判官」がした「裁判」であるところの保釈に関する決定に対する不服申立て手段は準抗告になる(刑事訴訟法429条1項2号)。

第四百二十九条 裁判官が左の裁判をした場合において、不服がある者は、簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては管轄地方裁判所に、その他の裁判官がした裁判に対してはその裁判官所属の裁判所にその裁判の取消又は変更を請求することができる。
一 忌避の申立を却下する裁判
二 勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する裁判
三 鑑定のため留置を命ずる裁判
四 証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判
五 身体の検査を受ける者に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判
○2 第四百二十条第三項の規定*2は、前項の請求についてこれを準用する。
○3 第一項の請求を受けた地方裁判所又は家庭裁判所は、合議体で決定をしなければならない*3
○4 第一項第四号又は第五号の裁判の取消又は変更の請求は、その裁判のあつた日から三日以内にこれをしなければならない。
○5 前項の請求期間内及びその請求があつたときは、裁判の執行は、停止される。

なお、準抗告地方裁判所の「裁判所」が合議体で審理する(刑事訴訟法429条3項)。

抗告は高等裁判所が審理する(裁判所法16条2号)。高等裁判所の裁判は原則として合議体で行われる(裁判所法18条1項)。

第十六条(裁判権) 高等裁判所は、左の事項について裁判権を有する。
一 地方裁判所の第一審判決、家庭裁判所の判決及び簡易裁判所の刑事に関する判決に対する控訴
二 第七条第二号の抗告を除いて、地方裁判所及び家庭裁判所の決定及び命令並びに簡易裁判所の刑事に関する決定及び命令に対する抗告
三 刑事に関するものを除いて、地方裁判所の第二審判決及び簡易裁判所の判決に対する上告
四 刑法第七十七条乃至第七十九条の罪に係る訴訟の第一審

 

第十八条(合議制) 高等裁判所は、裁判官の合議体でその事件を取り扱う。但し、法廷ですべき審理及び裁判を除いて、その他の事項につき他の法律に特別の定があるときは、その定に従う。
○2 前項の合議体の裁判官の員数は、三人とし、そのうち一人を裁判長とする。但し、第十六条第四号の訴訟については、裁判官の員数は、五人とする。

 

*1:「実務上は、形式的な意味での第1回公判期日を開いただけでは足りず、受訴裁判所が実態審理に入ることができるようになるまで、すなわち冒頭手続きが終了するまでであると解している。」(『逐条 実務刑事訴訟法』600頁)

*2:「勾留に対しては、前項の規定にかかわらず、犯罪の嫌疑がないことを理由として抗告をすることはできない。」

*3:裁判所法26条1項は「地方裁判所は、第二項に規定する場合を除いて、一人の裁判官でその事件を取り扱う。」とし、同条2項4号で「その他他の法律において合議体で審理及び裁判をすべきものと定められた事件」と規定する。刑事訴訟法429条3項は「他の法律において…定められた」ものである。