罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由の内実
「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当
の 理由があるとき」と規定されているのをみると、それは罪証隠減の単なる抽象的な可能性では足りず、罪証を隠滅することが、何らかの具体的な事実によつて蓋然的に推測されうる場合でなければならないことが明かである。
「被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」(刑訴法89条4号)とは、刑訴法60条1項2号のそれと同義である(『逐条実務刑事訴訟法』172頁)。
その程度は「単なる抽象的な危険性ではたりず、確実性までは要求されないが、具体的な資料によって裏付けられた高度の可能性のあることを要」する「予測的蓋然性判断であり、各要因について具体的に検討」(『条解刑事訴訟法(第4版増補版)』150頁)しなければならない。
つまり、具体的な事実に基づいて考えて、罪証隠滅が行われる高度の可能性がない限り、保釈は認められるべきことになる。
はずであるが、実務がそうなっているとはどうしても思えない。