SBGZ

仏教,歴史,哲学,法律についての備忘録。

直感を根拠にした主張は,悪い主張ではない。

法解釈の過程で,「結論の妥当性」が問題になる。
価値判断が前面に出てくる。
価値判断同士の対立は,通常の論理では解消できない。
各々の直感に拠らざるを得ない。

直感による場合でも,議論は成立する。
直感それ自体も,批判の対象となり得る。
「その直感は嘘だ」とは言えないが,「その直感は不合理である」とは言い得る。

道徳的直感の中には規範的議論において尊重に値しないものがある。その中には,誤った事実認識に起因しているものや,普遍化されたり具体化されたりすると本人でも肯定的に評価できない論理的帰結や事実上の結論に至るものがある。また同一人物が持っている直感がが矛盾する場合は,それらを整合的なものに改訂すべきである。しかしこれらのテストを通り抜けてきた道徳的な直感は,ちょうど科学において反証の最善の試みを生き残ってきた仮説と同様,とりあえずそれ採用しても不合理でない*1

規範倫理の議論をする際,単に他説の内在的な矛盾を指摘するに留まらず,それに替わる積極的な主張をするためには,何らかの直感が必要である*2

直感を根拠にした主張は,悪い主張ではない。
直感を根拠にした議論は,悪い議論ではない。
むしろ最後には必要になる。

*1:森村進リバタリアンはこう考える』107頁

*2:前掲・森村107頁