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仏教,歴史,哲学,法律についての備忘録。

「霧の中を行けば覚えざるに衣しめる。」とは,一流の人と時間を共有すること。

道元の言葉を記したとされる『正法眼蔵随聞記』の五には,以下のような話がある(水野弥穂子訳『正法眼蔵随聞記』(ちくま学芸文庫)282頁)。

故人伝ク,「霧の中を行けば覚えざるに衣しめる。」ト。よき人に近ヅけば,覚エざるによき人となるなり。

道元は,これに続いて,2つの話をする。

第1に,『倶胝和尚の従者をしていた童子は,特に勉強・修業したわけでもないのに,自分も知らない間に仏道を悟った』という話。

 第2に,坐禅をしていると,自分でも分からないうちに突然,悟ることがあるという話。

『霧の中を進んでいると,知らない間に,服が湿る。』

これと同じように,

『よい人と親しくすると,知らない間に,よい人になる。』

つまり,一流の人と時間を共有すると,その薫陶を受け,自分でも知らない間にその道を会得することができる。