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仏教,歴史,哲学,法律についての備忘録。

名前の後ろに「あきら」がつく歴史上の人物

源高明(たかあきら)

安倍晴明(はるあきら)

平知章(ともあきら)

足利義詮(よしあきら)

足利満詮(みつあきら)

高師詮(もろあきら)

蘆名盛詮(もりあきら)

二階堂行詮(ゆきあきら)

瀬名氏明(うじあきら)

朝倉景鏡(かげあきら)

加藤嘉明(よしあきら)

青景隆著(たかあきら)

大崎持詮(もちあきら)

真田幸詮(ゆきあきら)

細川斉詮(なりあきら)

今出川公詮(きんあきら)

相良長在(ながあきら)

山名義蕃(よしあきら)

被疑者段階でも勾留理由開示を請求できる条文上の根拠

勾留理由開示について規定した刑事訴訟法82条には「被告人」としか書いていない。

第八十二条 勾留されている被告人は、裁判所に勾留の理由の開示を請求することができる。
○2 勾留されている被告人の弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹その他利害関係人も、前項の請求をすることができる。
○3 前二項の請求は、保釈、勾留の執行停止若しくは勾留の取消があつたとき、又は勾留状の効力が消滅したときは、その効力を失う。

しかし、被疑者段階でも勾留理由開示は認められる。

刑事訴訟法207条1項によって、「勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。」とされているからである。

勾留に関する「裁判長と同一の権限」

 

第二百七条 前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。但し、保釈については、この限りでない。

 「勾留の請求を受けた裁判官」が「裁判所又は裁判長と同一の権限を有する」事項は以下のとおり(有斐閣判例六法』の参照条文に拠る。)。

  • 勾留の理由、期間、更新(60条)
  • 勾留質問(61条)
  • 令状発付(62条)
  • 勾引状・勾留状の方式(64条)
  • 勾引状・勾留状の執行(70条)
  • 勾引状・勾留状の執行の手続(73条)
  • 護送中の仮留置(74条)
  • 弁護人選任関係(77~79条)
  • 接見交通(80、82条)
  • 勾留理由開示(83~86条)
  • 勾留取消(87条)
  • 勾留執行停止(95条)

被疑者について保釈請求ができない条文上の根拠

保釈は「被告人」についてだけ認められている。被疑者は保釈されない。保釈について定めた刑事訴訟法89条及び90条には「被告人」としか記載がないからである。

第八十九条 保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。
一 被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
二 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
三 被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
四 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
五 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏い怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
六 被告人の氏名又は住居が分からないとき。


第九十条 裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。

告訴状の「受理」

警察は、告訴を受理する義務がある。

司法警察員たる警察官は、告訴、告発または自首をする者があつたときは、管轄区域内の事件であるかどうかを問わず、この節に定めるところにより、これを受理しなければならない

(犯罪捜査規範63条1項)

告訴状に証拠を添付する必要は、本来はない。告訴は口頭でも受け付けるとされている。

つまり、証拠となるような資料の提出は必須ではない。

自首を受けたときまたは口頭による告訴もしくは告発を受けたときは、自首調書または告訴調書もしくは告発調書を作成しなければならない。

(犯罪捜査規範64条1項)

また、告訴の趣旨が不明であれば後に補充させることを想定している。趣旨不明を理由に告訴を受理しないことは想定されていない。

書面による告訴または告発を受けた場合においても、その趣旨が不明であるときまたは本人の意思に適合しないと認められるときは、本人から補充の書面を差し出させ、またはその供述を求めて参考人供述調書(補充調書)を作成しなければならない。

(犯罪捜査規範65条)

とはいえ、犯罪捜査規範は「警察官が犯罪の捜査を行うに当つて守るべき心構え、捜査の方法、手続その他捜査に関し必要な事項を定め」(同1条)た内規というのが本質である。

 

告訴状の「受理」に関する法律としては、行政事件手続法37条がある。

行政事件手続法上、届出に対する「受理」という概念は存在しない。

適式な届出を受けた行政機関は、当然にこれを受理しなければならない。

届出が届出書の記載事項に不備がないこと、届出書に必要な書類が添付されていることその他の法令に定められた届出の形式上の要件に適合している場合は、当該届出が法令により当該届出の提出先とされている機関の事務所に到達したときに、当該届出をすべき手続上の義務が履行されたものとする。

(行政事件手続法37条)

 

なお、行政事件手続法37条は同法第5章に規定されている。

刑事事件であることを理由として適用除外はされないし、そもそも、告訴状の受付は処分でも行政指導でもない。

第三条 次に掲げる処分及び行政指導については、次章から第四章の二までの規定は、適用しない。
(中略)
五 刑事事件に関する法令に基づいて検察官、検察事務官又は司法警察職員がする処分及び行政指導

(行政事件手続法3条1項5号)

 しかし、警察も検察も、告訴状を「不受理」とする。

郵送で送付しても返送してくる。

捜査機関は、告訴状の提出が「届出」(行政事件手続法37条)に該当しないと解釈しているようである。

あるいは、同条所定の要件のいずれか(下記)を欠くと考えているようである。

  1. 届出が届出書の記載事項に不備がないこと
  2. 届出書に必要な書類が添付されていること
  3. その他の法令に定められた届出の形式上の要件に適合している場合

 

 

 

保釈に対する抗告と準抗告の違い

起訴後、第一回公判まで*1にされた保釈請求に対する不服申立て準抗告になる。

第一回公判後にされた保釈請求に対する不服申立ては抗告になる。

 

まず、保釈請求に関する決定(許可決定又は請求却下決定など)については、刑事訴訟法420条2項に基づき、抗告をすることができる。

第四百二十条 裁判所の管轄又は訴訟手続に関し判決前にした決定に対しては、この法律に特に即時抗告をすることができる旨の規定がある場合を除いては、抗告をすることはできない。
○2 前項の規定は、勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する決定及び鑑定のためにする留置に関する決定については、これを適用しない。
○3 省略

第一回公判後の保釈請求に関する決定をするのは「裁判所」なので、抗告になる。

 

第一回公判前の保釈請求については「裁判所」ではなく「裁判官」が裁判を行う。「勾留に関する処分」には、保釈請求に対する決定も含まれる。

第二百八十条 公訴の提起があつた後第一回の公判期日までは、勾留に関する処分は、裁判官がこれを行う。
○2 省略
○3 前二項の裁判官は、その処分に関し、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。

「裁判官」がした「裁判」であるところの保釈に関する決定に対する不服申立て手段は準抗告になる(刑事訴訟法429条1項2号)。

第四百二十九条 裁判官が左の裁判をした場合において、不服がある者は、簡易裁判所の裁判官がした裁判に対しては管轄地方裁判所に、その他の裁判官がした裁判に対してはその裁判官所属の裁判所にその裁判の取消又は変更を請求することができる。
一 忌避の申立を却下する裁判
二 勾留、保釈、押収又は押収物の還付に関する裁判
三 鑑定のため留置を命ずる裁判
四 証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判
五 身体の検査を受ける者に対して過料又は費用の賠償を命ずる裁判
○2 第四百二十条第三項の規定*2は、前項の請求についてこれを準用する。
○3 第一項の請求を受けた地方裁判所又は家庭裁判所は、合議体で決定をしなければならない*3
○4 第一項第四号又は第五号の裁判の取消又は変更の請求は、その裁判のあつた日から三日以内にこれをしなければならない。
○5 前項の請求期間内及びその請求があつたときは、裁判の執行は、停止される。

なお、準抗告地方裁判所の「裁判所」が合議体で審理する(刑事訴訟法429条3項)。

抗告は高等裁判所が審理する(裁判所法16条2号)。高等裁判所の裁判は原則として合議体で行われる(裁判所法18条1項)。

第十六条(裁判権) 高等裁判所は、左の事項について裁判権を有する。
一 地方裁判所の第一審判決、家庭裁判所の判決及び簡易裁判所の刑事に関する判決に対する控訴
二 第七条第二号の抗告を除いて、地方裁判所及び家庭裁判所の決定及び命令並びに簡易裁判所の刑事に関する決定及び命令に対する抗告
三 刑事に関するものを除いて、地方裁判所の第二審判決及び簡易裁判所の判決に対する上告
四 刑法第七十七条乃至第七十九条の罪に係る訴訟の第一審

 

第十八条(合議制) 高等裁判所は、裁判官の合議体でその事件を取り扱う。但し、法廷ですべき審理及び裁判を除いて、その他の事項につき他の法律に特別の定があるときは、その定に従う。
○2 前項の合議体の裁判官の員数は、三人とし、そのうち一人を裁判長とする。但し、第十六条第四号の訴訟については、裁判官の員数は、五人とする。

 

*1:「実務上は、形式的な意味での第1回公判期日を開いただけでは足りず、受訴裁判所が実態審理に入ることができるようになるまで、すなわち冒頭手続きが終了するまでであると解している。」(『逐条 実務刑事訴訟法』600頁)

*2:「勾留に対しては、前項の規定にかかわらず、犯罪の嫌疑がないことを理由として抗告をすることはできない。」

*3:裁判所法26条1項は「地方裁判所は、第二項に規定する場合を除いて、一人の裁判官でその事件を取り扱う。」とし、同条2項4号で「その他他の法律において合議体で審理及び裁判をすべきものと定められた事件」と規定する。刑事訴訟法429条3項は「他の法律において…定められた」ものである。

「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」と「罪証を隠滅する虞」との違い

「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」があるときが権利保釈の除外事由(権利保釈が許されない例外的な場合)とされている(刑事訴訟法89条4号)。

第八十九条 保釈の請求があつたときは、次の場合を除いては、これを許さなければならない。
一 被告人が死刑又は無期若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
二 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
三 被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
四 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
五 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏い怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
六 被告人の氏名又は住居が分からないとき。

これは、元々は「罪証を隠滅する虞があるとき」という文言になる予定だった。それが国会の審議(昭和23年6月30日第2回国会衆議院司法委員会第46号)で修正された。

井伊誠一委員長の発言

○井伊委員長 それではこれにて質疑を打切ります。  なお委員長の手もとに各党提案にかかる修正案がまいつておりますので、この際これを朗読いたします。  刑事訴訟法を改正する法律案の一部を修正する案  刑事訴訟法を改正する法律案の一部を次のように修正する。

(中略)

 第八十九條第四号中「虞があるとき。」を「と疑うに足りる相当な理由があるとき。」に改める。

(中略)

修正案について提案の説明を願います。鍛冶良作君。

鍛冶良作委員の発言

簡單に修正案の理由を説明いたします。

(中略)

次に第八十九條第四号の修正でありますが、これは保釈を拒絶する理由の一つとして「罪証を隠滅する虞があるとき。」となつておつたのであります。この虞れありというだけでありますと、あらゆる場合が含まれますので、これを理由に保釈を拒絶せられることが多いと考えましたので、でき得るだけこれを嚴格に定むべきものだと考えまして、「隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき」と改めて、相当な理由を明示し得るとき、または明示するにあらざれば拒否できないということに改めたのであります。

(後略)

刑事訴訟法89条4号の「罪障を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」と勾留の理由である「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」(刑事訴訟法60条1項2号)とは同義である。

本号*1に定める罪証隠滅のおそれも、60条1項2号のそれと理論的な意義では差異はない。
(『条解 刑事訴訟法(第4版増補版)』188頁)。

本条4号にいう罪証隠滅のおそれは、60条1項2号のそれと同義である。

(『逐条 実務刑事訴訟法』172頁)

しかし、どちらのコンメンタールも「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」を「おそれ(虞)」と軽く言い換えている。刑事訴訟法制定の経緯に鑑みれば、大変に不用意である。 

 

なお、上記審議の中で、岡井藤志郎は真っ向から反対する意見を述べている自由権は少数者の自由を保障するためにあることを理解しない主張であり、「不見識」といわざるを得ない。

○岡井委員 同僚各位からお出しになつておられる点、これは私も満腔の熱誠を捧げてこれに賛成し支持するものでございます。そのほかに私の個人の意見でございまするが、個人の意見でございまするのであえて皆樣にお諮りせずに、そのいとまもございませんでしたので、ここに提出する次第でございます。すなわち第三十九條第一項中「立会人なくして」を削る。その理由は、かくのごとく立会人なくして接見ができるとするならば、身体拘束の意義いずれにありやということを問いたい。身体拘束をする必要は毛頭ない。ただ体が刑務所におるというだけであつて、自由自在に交通ができる。いかなることでも立会人なくしてやれば天下なし能わざることなしです。そうして弁護人は当該事件の弁護に急なるあまり、いかなる聖人君子の弁護人でも、被告人と相当の相談をやり、相当の証拠隠滅は必ずやる。これはやらなければ人間でない。そうなれば勾引、勾留、逮捕ということはまつたくやめてしまつたらよろしい。何らの意義もなさない。

 その次は第百九十八條第二項を削る。それから第二百九十一條中「終始沈黙し、又は個々の質問に対し陳述を拒むことができる旨その他」を削る。それから第三百十一條第一項、及び第二項中「被告人が任意に供述をする場合には」を削る。その理由。そもそも身体拘束のごときこそ不利益供述強要の最たるものです。不利益供述を強要するのには身体拘束が最もよろしい。これ以上に有効適切なる方法はない。うそだと思つたら実驗を受けてみたらわかる。ところがこの論理に從い、実原則に從い、またほかの証拠に照し合わせてみたら、質問、尋問というものは決して憲法にいわゆる不利益供述強要ではない。それでわれわれはよろしくこの被告人の地位のみでなく、國家の地位を考えなければいかぬ。被告人のみの人権を擁護するに止まらず、國民大多数は善良なる人々です。この善良なる大多数の人々の基本的人権を擁護するということを考えなければいけない。贈收賄のごとく本人のほか知る者のない犯罪、これは贈賄者も收賄者もともに被告人になるべきものでございまするが、これらは本人のほか知る者はない。かような犯罪は國家の尋問権を認めなければわかりつこない。それから窃盗、強盗、殺人のごとき平凡なる犯罪は、被害届があつて被害はわかりまするが、本人に尋問することができなければ本人に結びつきがつかない。ですから贓品を一つもつておりましても、これこれの窃盗であると認定するわけにもいきませんし、またどの程度、どの分量の窃盗であるかということを認定するによしなきもので、刑の量定ができない。そこで弁護人と自由に交通ができるということと、國家は被告人に向つて尋問権がないということにいたしますれば、結局世の中のばか正直なもの、智惠の足りないものが罰せられて、少しく知識階級の者がこの二箇條を悪用したならば、もう刑罰を科せられるということは絶対にないという結果を招來するものと思います。政治家としてかかるむちやな立法に賛成をするということは不見識である。わが日本は経済その他あらゆる文明の点からいつても、アメリカのごとき大國と違いまして貧弱國である。生存競爭がはげしい。かような國で司法が乱れたならば國は亡びる。この重大なる点を私はいかにしても閑却することができない。それからすでに一言申し上げましてたが、國家が被告人に向い、被疑者に向つて尋問権がないといたしますならば、犯罪がありと思料しただけで無罪の判定を受くべき人間に向つて逮捕状を発する。勾引状を発する。無制限に勾留する。これいかに。ものをお伺い申すくらいは問うたらいいじやないか。尋問ぐらいはかけられないで國家であると言えますか。この点についてはアメリカがわからぬならばアメリカの蒙を啓く必要があると思う。私はかような立法に対しては、個人といたしましても断々固としてかような立法を阻止しなければならぬと思う。もり機会があれが本会議でもどこにでも出て、私一人でも反対します。かように思います。

*1:刑事訴訟法89条4号